新渡戸文化小中学校

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ヴァイオリン鑑賞会「世界の音楽を聴こう」ライナー・ホーネック氏

先頃、世界的に有名なウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターであるライナー・ホーネック氏が新渡戸文化学園の児童・生徒たちに会いに来てくださいました。

ホーネック氏と親交が深い保護者の方の御厚意で、ホーネック氏が新渡戸文化小中学校にも是非立ち寄り子どもたちに会いたいということになり、大変貴重な機会の実現に至りました。

児童・生徒たちが毎日練習してきたドイツ語のあいさつをホーネックさんに送り、鑑賞会が始まりました。

ホーネックさんはヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲の『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』からパルティータno3などを演奏して下さいました。

 

バッハの今回の曲は全体に複数の音を同時に発生させる演奏技法が多く用いられ、演奏は容易ではないそうで、高い音と低い基底の音とを交互に或いは同時に次々と畳み掛け着実に演奏していくホーネックさん。そのヴァイオリンの響きは聴いていて、高・低の音域どちらも澄んでいながら、全体の調和が大きな渦を創っているものでした。聴いている側の感情と同時に、大きな渦によって体も揺さぶられるようなエモーショナルな演奏でした。

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(後で1年生の子どもたちに感想を聞くと)演奏して下さった音楽については、「かっこよかった!」「きれいな音楽だった!」と1年生らしい素直な感想。加えて、「目を見ると青いような瞳だった!」「いいにおいがした!」と演奏だけでなく1年生は特に一番そばで聞くことができたので嗅覚まで使った感想にも驚かされました。

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今回この会を設けて下さった新渡戸文化の児童のお父様が通訳と解説も引き受けて下さり、ヴァイオリンについても解説がありました。

ホーネック氏が使用するヴァイオリンはイタリアで1725年に造られた Stradivarius。ヴァイオリン表面に塗られているツヤを出し木材を保護する役目も担うニス。その成分の詳細は未だに解明されていないそうで、 300年近く経っても(魔法のニスの耐久性も手伝って)どんどん音が良くなっているとの事です。

また、弓は200年前のものを使っているそうで、ホーネックさんの巧みで豊かな演奏の裏に、とても長い年月を経た音が響いているのだなと感じました。

ホーネックさんご本人からも解説があり、

“バッハの今回弾いた曲はとても弾くのが難しい曲で、きちんと弾けるかどうか、もしかしたら新渡戸文化ではうまく弾けないのではないだろうか?ととても緊張しました。”

(ここは、もしかするとホーネックさん流の一流ならではの高度な冗談だったのかも知れません。後になってホーネックさんがユーモアを持った方だと次第に分かってきます)

“皆さんがバッハの難しい曲を、とても静かに聞いてくれたので嬉しいです”

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子どもたちからも質疑応答の時間には臆せずに質問が挙がりました。

Q.ホーネックさんが尊敬する指揮者の中で、現在も生きている方と亡くなられた方の両方を教えて下さい。(高学年 男の子)

A.“私の尊敬する指揮者は皆、亡くなってしまった方ばかりです。”

A.“(ヘルベルト・フォン・)カラヤン、(レナード・)バーンスタイン、(カルロス・)クライバーです。”

質問した6年生の男の子の捻りのある質問に、ホーネックさんがユーモアも含ませて返してくれたので、思わず子どもたちからも(高度な?!)笑いが起きます。

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Q.どうしてヴァイオリンを始めたのですか?(低学年 女の子)

A.“7歳からお父さんに強制的にやらされ、始めは嫌いだったのですが、今では大好きになり、歯ブラシをするようにヴァイオリンを弾いています。”

子どもたちは、ホーネックさんが実はヴァイオリンが始めは嫌いだった!?と聞いて小体育室全体が驚いたような、同時にちょっと安心したような不思議な空気になり、その後に歯ブラシをするように弾けるようになりました、の所でやっと笑いが起きました。

ホーネックさんは次のように続けてくれました。

“ヴァイオリンは色々な感情表現ができます。とても幸せな感じ、(♪実際にヴァイオリンでワンフレーズ、幸せを表現しながら弾いてくれます♪)”

“次に、怒ったような感じ(♪地団駄を踏むように床を踏みつける体の表現とともに強い音を鳴らすホーネックさん♪)”

このユーモアに、子どもたちからも思わず笑いが巻き起こり、ヴァイオリンは感情を豊かに表せるという事を子どもたちにダイレクトに理解させてくれます。

“ヴァイオリンとは大きな可能性を持った楽器です。”

そうホーネックさんは締め括ってくれました。

 

今回貴重な機会を与えて下さったホーネックさんへのお礼として、代表児童・生徒による花束の贈呈、そして日本の伝統文化を見て頂こうと剣道部の生徒2人の本格的な稽古の様子をホーネックさんに披露しました。迫力ある打ち合いに子どもたちも思わず息を呑み、思わず拍手が子どもたちとホーネックさんからも湧き上がりました。

 

実はホーネックさんは急遽、子どもたちが知っている歌をヴァイオリンで弾きたいと音楽の授業でも子どもたちも慣れ親しんでいる日本のフォークソングの名曲『翼をください』も子どもたちの合唱と音楽専科の先生の伴奏にのせて弾いて下さいました。

世界的に著名な演奏家ですから、恐らく日本のフォークソングの主旋律を弾くということは異例中の異例だと思います。しかし、ホーネックさんがヴァイオリンは感情を表現できる、可能性を持った楽器とおっしゃる意味が分かる、緩急含みのある豊かなメロディーになっていて、400人弱の児童生徒の声に勝る演奏だったので、ホーネックさんの「子どもたちが知っている曲を」という心遣いと合わせて、ヴァイオリンの可能性にも大変驚かされました。

そして会の最後になりました。

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「さらばさらば わが友」の歌詞で始まる、日本でもベテランの先生方の年代には馴染みの深いドイツ民謡『わかれ』。

最後にその歌を全児童・生徒で合唱し、ホーネックさんとの別れを惜しみました。ホーネックさんもすぐさまヴァイオリンで一緒に弾いて下さり、子どもたちの歌声と世界的奏者のヴァイオリンの響きが調和し合うという奇跡が小体育室全体に広がりました。

歌詞にある通りの「身は離れゆくとも 心は一つ」、ホーネックさんが著名なヴァイオリン奏者という立場を越えてとても近しい存在に感じられた、そんな素晴らしいヴァイオリン鑑賞会となりました。

 

今回のこの貴重な体験は、新渡戸文化家族である保護者の方の御尽力による所が大きいです。ホーネックさんを新渡戸文化家族の一員と言っていいほどに間近に感じることができた貴重な演奏会の機会を与えて下さった事を、心より感謝いたします。