2022.01.15

【note連載】「とにかくやってみる」小学校に出会ってしまった話

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こんにちは、新渡戸文化小学校note編集部の染原(そめはら)です。前回、年の瀬に「はじめまして」をしてから2週間。誰からもご覧いただけなかったらどうしようとドキドキしていた初回の投稿は、思った以上にたくさんの方からご覧いただき、関係者一同、年初からとっても嬉しい気持ちになりました。
ご覧いただいた方、本当にありがとうございます。

 

note連載 はじめまして、新渡戸文化小学校です

 

早速関係者の方から「こんなことを掲載したらどうですか?」といったアイデアをもらったり、わたしたちの中でも発見があったりして、小さな一歩でも「始めてみること」って大切だなあ、と改めて実感しています。

 

そんなご意見の中に「染原さんって、そもそも誰ですか」といったお言葉をいただいたので、今日はわたしがこうしてnoteを書くことになった経緯を少しだけ書いてみたいと思います。

 

まずわたしは、普段はメディア企業に勤めています。その傍ら、兼業で新渡戸文化小学校のPR活動に関わらせていただいております。新渡戸文化学園では、自校の先生たちに副業や兼業を推奨しているのみならず、わたしのような先生以外の社会人を学校運営に積極的に受け入れています。例えば、私のようなメディアの人間であれば、メディアでの仕事を通じて得られた知見を、学園で活かしてお手伝いをさせていただくわけです。

 

また、わたしは新渡戸文化小学校に子供を通わせている保護者の一人でもあります。そして、保護者になった経緯そのものが、わたしが当校でお仕事をさせていただくことにつながっているため、少し長くなりますが、書いてみたいと思います。

 

今からちょうど2年ほど前、あと1年と少々で息子が保育園を卒園するというタイミング。息子を通わせることになる公立小学校について、どんな学校かな、と気になり始めた時期でした。

 

そんな折、その小学校を見に行く機会を得ることができました。全校児童130人の小さな小学校。1学年1クラスと小さいことがやや気になっていましたが、小さいからこそできる授業や先生と児童との関わりのようなものがあれば、むしろいいなと思っていました。

 

しかしながら、当日学校に行ってみると、残念ながらそのような様子は感じられませんでした。たまたまそのときそうだったのかもしれませんが、児童と先生との生き生きした会話や、わいわいと行き交う子供たち同士のやりとりを想像していたわたしは、さみしい気持ちになって、廊下から夫にLINEしたことを今でも覚えています。

 

小学生を親にもつ友人にその話をしたところ、「公立だしね」「公立は先生や校長次第だしね」という感じで、皆「公立」というものに対して諦めている雰囲気。その後色々調べてみる過程で、ユニークな公立小学校の情報も得ましたが、引っ越してまでそうした学校に通わせるという選択肢はありませんでした。

 

せめてもう少し人数が多い小学校に通い、多くの子供に揉まれるような環境を得られればと思い、徒歩圏内の別の大きな公立小学校に指定校変更を申請してみようと区役所にいきましたが、当然区域外就学にはそれなりの理由が必要。審査以前に窓口で申請書さえ受け取ってもらえない状態でした。

 

さてどうしようか、そう思っていたときに、初めて「公立以外」の選択肢が出てきました。「小学校受験」を経験した友人にアドバイスをもらい、まずは自宅から40分以内でいける学校をリストアップしました。

 

そしていざ説明会を聞きにいこうとしたタイミングに、コロナが直撃。その後4〜6月に実施予定だった小学校の説明会は、軒並み延期か中止、もしくは動画配信へと変更となりました。情報ソースを説明会一本にほぼ絞っていたわたしたち家族は、「詰んだ…」と頭を抱えました。

 

一方、それが結果として、のちの小学校選択に大きな意味をもたらすことになったのです。リストアップした学校の中で、唯一Zoomでの説明会実施を決めた学校があったのです。それが新渡戸文化小学校でした。

 

当然新渡戸文化小学校もオンライン説明会は初めて。「Zoomというサービスを使ってやってみます…」という少し頼りない感じでしたが、それでも「参加者の知りたいことに答えたい」という様子が端々から伝わってきました。

 

理事長や校長先生のお話では、「世界的に見て、日本の子供の学力は高い一方、冒険心や自分が世界を変えられるという気持ちを持つ子供が少ない現実を前に、小学校がやるべきことを今こそ真剣に考えるべき」という危機感にも似た意気込みを感じました。「幸せを創る人を育てる」というビジョンを掲げ、自分が幸せであること、それをもって他人を幸せにすることを、どのように子供たちが自分ごとにできるかを真剣に考えている様子がうかがえました。

 

質疑応答の時間で、ある親御さんが質問したことへの回答も印象的でした。「子供にとって先生とはどのような存在であるべきだと考えているか」という主旨の質問に対して、遠藤崇之校長補佐が次のように回答したのです。「子供を子供だと思わず、20年後に大人になる子供たちが、その20年前に、今たまたま自分の前に現れていると考えるようにしています。そうすればこそ、先生か児童か、という関係ではなく、お互いを尊敬し合って関係を紡いでいけると考えているからです」。

 

受験についての考えにも共感しました。安蔵素乃教頭が「わたしたちは答えのある学びを小学校以前から詰め込むことは望んでおりません。なにも準備をしなくて大丈夫です。どうかそのままでおいでください。勉強は小学生になってから、わたしたちにお任せください」と話してくださり、小学校受験というものに違和感を感じていたわたしたち夫婦の不安は一気に解消されました。実際に考査はあるものの、それも最小限にしている印象を受けましたし、その年からいわゆるペーパーテストは行わない「好きなこと入試」を導入し始めたことにも好感を持ちました。

 

時代の要請に応え、アフタースクールに力を入れていることもあり、共働きの親が6〜7割いるというのも、わたしたち夫婦にとってありがたいポイントでした。

 

Zoomで行われたその説明会は、1時間程度の予定でしたが、予定終了時間を大幅に超え、2時間近くに及びました。そしてその半分以上の時間を参加者の質疑応答に割いていたのが印象的でした。未曾有の状況下で、迅速に意思決定し、Zoomでやってみる、その中で誠心誠意参加者のニーズに応えようとする姿勢は、まさにこの学校の校風そのものを表しているように思いました。

 

わたしたち夫婦は一気に新渡戸文化小学校に興味を引かれました。子供にとってよい学校であると信じられる以上に、このような学校に保護者として関われたら、これほど親にとっても勉強になることはないと思ったのです。説明会終了後、「スタートアップのような小学校だね」と興奮気味に夫婦で話したことを今でも覚えています。

 

晴れてご縁があって入学したあとも、先生や職員の方が、いつも子供とその親に真剣に向き合ってくださる姿をみて、わたし自身も保護者として精一杯協力できることをしたい、そんな気持ちで過ごしていました。そんな折に、兼業で小学校の運営に関わる人材の募集があり、思い切って応募してみたのです。保護者ということもあり、小学校側も驚いたようでしたが、ここでも「まずはやってみる」の精神で、保護者を兼業人材として雇い入れてくださったのでした。

 

わたしは、元々書くことを仕事にしていた経験があるため、こうしてブログの執筆などをお手伝いさせていただくことになったのでした。

 

わたしがこのnoteを通じてみなさんと一緒に考えていきたいのは、あるべき公教育の未来です。様々な学校のミッションや先生たちの取り組みを取材し、ここに書き記すことで、1人でも多くの人が子供の教育や学校について考え、行動を起こすきっかけや仲間を見つけられたとしたら、これ以上嬉しいことはありません。

 

わたしが今もなお気持ちが「ざらっ」とするのは、子供が「私立」に通っているということを誰かに話すときです。「そんな小さな子に受験をさせたのか…」とか「共働きで余裕があるから」というステレオタイプな印象を持たれてしまうことを恐れて、堂々と私立に通っていることを言えない自分がいます。

 

私立なんです、と言うか言わないか慌てて付け加えるように、「塾とか受験とかとはほとんど無縁の学校で…」とか「1つだけ気に入った学校があって、そこがだめなら公立の小学校でと思っていたんです…」とか、本当のことなのですが、いいわけじみたことを慌てて付け加える自分になんだか違和感を感じてしまうのです。

 

私立か公立か、という区分ではなく、その学校自体が何を目指しているのか、社会の公器としてどのように社会に貢献していきたいと考えているのか、そうした学校のビジョンやミッションから子供に合った学校を選ぶ世界になり、それが当たり前になっていってほしい。そんな状況を大人たちみんなでつくることができれば、その世界はきっとよりよいものになっているに違いないと思います。

 

そして新渡戸文化小学校もまた、ビジョンやミッションで選ばれる学校になっていきたい。私自身も子供が「私立」に通っているのではなく、「新渡戸文化小学校」に通っている、そう言えるようになりたい。それに対して少しでもわたしができることがあれば、と今日もペンを執っている次第です。

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